ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの約束へとたどり着くまでの甘い軌跡。~

 まだ肌寒さは残りながらも、春の空気を感じる日も多くなった、三月中旬。

 いよいよ、少年野球の地区大会が始まった。
 それなりの規模のちゃんとした大会で、ここで勝ち進めば、全国のチームが集まる上位大会へと駒を進めることができる。

 子供たちは、僕がコーチになった当初から見違えるほど成長していた。
 練習の成果を存分に発揮し、泥だらけになりながら白球を追いかける姿は、ベンチから見ていても頼もしかった。

 けれど——勝負の世界は甘くない。
 僕たちは、全国シリーズまであと一歩というところで敗退してしまった。

 ゲームセットのサイレンが鳴り響いた瞬間、グラウンドの空気が重く沈む。
 整列して挨拶を終え、ベンチに戻ってきた子供たちは、ポロポロと大粒の涙をこぼして悔し泣きをしている子もいれば、唇を噛み締め、ぐっと涙を堪えて地面を睨みつけている子もいた。

 その小さな背中を見ていると、僕の鼻の奥にもツンと熱いものが込み上げてきた。

(……ここで俺が泣くのは、違う)
 必死に奥歯を噛んで堪える。

 子供たちは、あんなに全身全霊で頑張っていた。
 僕がもっと、もっと上手く教えられていれば。
 あそこでもう少し適切な声かけができていれば、結果は違ったかもしれない。
 そんな考えが次々と、頭の中を巡ってしまう。

 僕自身が不甲斐なくて悔しかった。

「……コーチ、泣いてんの?」
 ふと、隣でしゃくりあげていた少年が、真っ赤な目で僕を見上げた。
「……いや。泣いてないよ」
 無理やり口角を上げて、少年の帽子の上からポンと頭を撫でた。

「お前ら、すげー頑張ったな。お疲れ」
 それだけ言うと、たまらずその場を離れた。

 特に用事もないのに、グラウンドの隅にある機材テントの裏へと足早に向かう。
 誰にもバレないように背を向け、目尻に溜まった涙を、こぼれ落ちそうになる前に指で拭った。

 自分の無力さと、子供たちの純粋な熱意。
 誰かの成長に本気で向き合い、一緒に笑って、一緒に悔しがる。
 なぜだろう。
 自分自身がマウンドに立って白球を投げていたあの頃よりも、今のほうがずっと大きく感情を揺さぶられていた。

 テントの向こうからは、まだ試合後のグラウンドのざわめきが遠く聞こえてくる。
 その熱気の奥で、胸の中にある一つの『決意』が、確かな輪郭を持って固まっていくのを感じた。