ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの初恋が熱を持った。不器用に重なり合うふたりの想いが、やがてひとつの約束へとたどり着くまでの甘い軌跡。~

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 あの甘い朝の余韻からエネルギーをもらった僕は、無事に一年生最後のテストを乗り切ることができた。

 そして、大学生の長い春休みが始まった。

 とはいえ、僕のスケジュール帳は真っ黒に埋まっていた。
 テスト期間中にシフトを減らしてもらっていた分、平日はファミレスのバイトにみっちり入り、週末は少年野球のコーチのバイトが控えていた。
 小学生の春休み期間に地域で開催される大きな大会に向けて、練習も本格化していたからだ。

 美絵とは、そんなぎっしり詰まった予定の合間を縫って、デートをした。

 関東で有名なテーマパークでは、「祥ちゃん、これ一緒に着けて!」と少し照れる僕に無理やりお揃いのキャラクターのカチューシャを被せ、チュロスを頬張りながら満面の笑みを浮かべていた。

 横浜の赤レンガ倉庫のあたりを歩いた時は、少し短くなった髪を海風に揺らしながら、「こうやって少し遠出すると、旅行みたいで楽しいね」とはしゃいで、僕の腕にぎゅっとしがみついてきた。

 少しでも隙間時間ができれば、どちらかの部屋で一緒に過ごすようにもした。

 俺が時間に余裕のある大学生だったら、もっといろんなところに連れて行って、一緒にいられるのにな。
 忙しさにかまけて、美絵に不満を抱かせていないだろうかと、ふと不安になることがある。

 でも、デート中に無邪気に楽しんでくれる姿や、待ち合わせ場所で僕を見つけた瞬間にパッと花が咲いたように笑う彼女の顔を見ると、その不安はすーっと溶けていった。

「また三日も会えないの……寂しい。……でも、バイト頑張ってね。応援してる」
「うん……ありがと」

 別れ際、美絵はそうやって素直に寂しさを言葉にしながらも、最後には必ず僕を気遣って微笑んでくれる。

 強がらずに自分の気持ちを伝えてくれる彼女の存在に、どれほど助けられているか分からなかった。