迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 まだ子供であるフィリーネが大人でもきついと感じる肉体労働を続ければ、いずれ過労で倒れてしまう。
 執事はハビエルたちにバレないよう、階下での仕事を野菜の下処理や生け花などにこっそり変えてくれた。他の使用人たちもフィリーネの負担にならないようフォローしてくれている。

 そのおかげでフィリーネは今日まで無事に仕事ができていた。
「最近は手際が良くなったようなので、料理長から褒められたんですよ!」

 フィリーネがにこにこと笑いながら言うと、マーシャがなんとも言えない表情を浮かべた。
「フィリーネお嬢様もミリーネお嬢様と同じ伯爵令嬢なのに。どうして……」
 思わずといった様子でマーシャは呟く。


 これは使用人の誰もが思っていることだった。
 気位が高くわがままなミリーネと違い、フィリーネは虐げられている環境下でも明るく笑顔を絶やさない。真面目に一生懸命働くし、誰に対しても分け隔てなく接する。

 闇の精霊に祝福された子供がどれほどアバロンド家にとって脅威なのかを教えられても尚、使用人たちはフィリーネに親しみを覚えずにはいられなかった。

「闇の精霊師は光の精霊師の力を奪います。だからお父様たちが神経を尖らせてしまうのは無理もありません。傍系にも光の精霊師はいらっしゃいますが、お姉様ほどの力を持つ方はいらっしゃいませんから。ところでマーシャ、目の下にクマができていますが、昨日はよく眠れましたか? 何か悩みごとでもあるのですか?」