迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 作業場に戻ると、マーシャがフィリーネに代わって花瓶に花を生けてくれていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
 フィリーネに気づいたマーシャは破顔して花瓶を手で示した。先ほど剪定していた花々がバランスよく彩られている。

「花を生けてくれてありがとうございます。私よりもマーシャの方が忙しいでしょうに」
 フィリーネがあたふたしていると、マーシャは首を横に振った。

「花を生けるだけでしたので問題ありません。それより今日は正午にランドレイス様がお越しになると伺っております。時間までに階上の仕事を終えておきませんと、フィリーネお嬢様が罰を受けてしまいます」
「ありがとう。階上の残りの仕事はこの花瓶を持って行くだけです。後は厨房で野菜の皮むきと切るだけですから、心配いりません」

 フィリーネはハビエル指示のもと、六歳の頃から屋敷掃除や暖炉の石炭の補充、洗濯といった肉体労働を課せられている。

 これらは屋敷勤めを始めた下っ端の侍女がする仕事で、昇格すれば身体を酷使しない知的労働へと変化していく。
 しかし、侍女ではないフィリーネにそれらの仕事は決して巡ってこない。
 ハビエルが指示しない限りずっと肉体労働だ。