(お父様に止められているので精霊契約は結んでいませんが、闇の精霊――紫紺蝶は定期的に私のもとを訪れます。私と契約したいなら無理強いだってできるはずなのに、そんな素振りは一切ありません)
フィリーネは定期的に現れる黒色に発光した紫色の蝶を紫紺蝶と呼んでいる。
紫紺蝶はハビエルたちから不幸を振り撒く不吉な存在として恐れられている。だが、フィリーネはそう思わない。
紫紺蝶が側にいると不思議なことに心が落ち着いて安らぐ。怖いだなんて感じたことは一度もない。これは単に自分の神経が図太いのだろうか。
「ちょっと。いつまでボサっと突っ立ってるの? 話は終わったんだからさっさと持ち場に戻りなさいよ」
「その通りだ。休む暇があるなら身を粉にして働け! 私はこれからプセマ準男爵との商談で数日屋敷を空ける。だからと言って手を抜くんじゃないぞ!」
ミリーネとハビエルの一喝によってフィリーネの意識が現実に引き戻される。
「あ、はい! 承知しました。それでは失礼します」
フィリーネは二人に深く礼をして地下へ帰った。



