迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~


 フィリーネは六歳の頃から召使いとしてこの屋敷で働かされているが、外では病弱設定になっている。つまり、ボロを纏った召使いの姿では都合が悪いのだ。
 ミリーネの汚物でも見るような目つきと目が合った瞬間、フィリーネは居心地が悪くなって咄嗟に視線を逸らした。

 するとそこで、父のハビエルが新聞紙を小脇に抱えてやって来る。
「ミリー、今朝の社交界新聞はおまえの話で持ちきりだぞ! 先日の慈善活動でまた精霊師の腕を上げたようだな。より耳目を集める結果になって私も鼻が高い」

 ハビエルは相好を崩して新聞の表紙をテーブルの上に置く。トップには『ミリーネ=アバロンド伯爵令嬢、鉱山事故の負傷者の傷を癒やす』と、その功績が大々的に取り上げられていた。

「お父様、私は強力な治癒の力を持つ光の精霊師よ。傷ついた人たちを癒すのは私の務めであり、当たり前だわ。不幸を振り撒く忌み子の誰かさんとは違ってね」
「申し訳ございません」
 二人から蔑んだ視線を向けられたフィリーネは肩を窄める。気づけば謝罪の言葉を口にしていた。


 精霊師とは、自分の体内に流れる魔力(マナ)を使って精霊と契約を結ぶ者のことをいう。
 人間の体内には魔力が流れているが、それを己の力で魔法へと変換することができない。
 よって、精霊と契約して魔力を与える代わりに、精霊の魔法を使わせてもらうという形を編み出した。契約できる人間には適正があり、精霊師になるには精霊と魔力の波長が合うかどうかにかかっている。

 たいていは親と同じ属性の精霊との契約になるのだが、稀に違う場合がある。また、親が精霊師だからといって必ず子供も精霊師になれるとは限らない。逆もまた然りだ。
 けれど、ミリーネは完璧にアバロンド家の光の精霊師で、歴代屈指の力を誇っていた。