迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



 額に脂汗を滲ませて痛みに耐えている。この状態で仕事を続けさせるのは忍びない。
 他の使用人たちはまだ忙しなく働いていて、この侍女の体調不良に気づいていなかった。
 アーネストの来訪もあり、皆いつもより念入りに作業をしている。したがって、現状手を貸せるのはフィリーネしかいなかった。

(書斎の窓拭きだけなら大変じゃないですし、時間までには間に合います)
 地下にいるようミリーネに言いつけられていたフィリーネだったが、体調が優れない彼女を見捨てられなかった。

「窓拭きなら私にもできますから、どうぞ休んでください」
「すみません、お嬢様。ではお言葉に甘えさせていただきます」

 侍女と別れたフィリーネは、書斎へ移動しててきぱきと窓拭きを始める。
 書斎の窓はそれほど枚数は多くない。丁寧に拭いても正午までに間に合うだろう。

「今日はお天気が荒れそうですね」
 手を動かしながら、フィリーネは外の景色を眺めた。

 季節の変わり目ということもあり、厚い雲が広がってどんよりとしている。
 そして、その雲の下には君主と許された家臣だけが暮らせる空中都市――空都が宙に浮いていた。