フィリーネは、先ほどからマーシャの目の下にクマができているのを気にしていた。
指摘されたマーシャは最初こそ何でもないと言っていたが、フィリーネが根気強く尋ねると、観念したのか答えてくれた。
「実は次の休みに弟の結婚式へ参加するのですが、スピーチを頼まれているんです。大勢の前で話すなんて普段はしないので、想像したら眠れなくなってしまいました」
「弟さんの結婚式に参加だなんて素敵です。緊張して眠れないのなら、私に任せてください!」
フィリーネはマーシャの手を取ると目を伏せめがちにして、彼女がリラックスできるようにと祈りの言葉を紡ぐ。
指先から微かに紫色の光の粒が現れ、マーシャの指に馴染むように消えていった。
フィリーネには紫の光の粒の動きが見えるが、マーシャや他の人の目には映らない。何故か分からないが、この光の粒はフィリーネしか認識できないものだった。
最後の光の粒が消えると、フィリーネはマーシャの手を離す。
「マーシャのために祈ったので、今夜からは安心して眠れます。本番も緊張することなくスピーチができますよ」
「ありがとうございます。精霊師でなくとも、不思議な力が備わっているお嬢様はれっきとしたアバロンド家の一員です」



