契約婚だから溺愛は不要です〜余命一年で捨てられた私はホテル王に求婚される〜

 目の前に現れた望月さんにあの日の笑顔はない。
 でも、艶のある長い黒髪に、長いまつ毛に彩られた黒い瞳に思わず見惚れた。

(俺は彼女に一目惚れしていたのか? あんな精神状態の時に⋯⋯全く、自分に呆れる)

「初めまして。白川社長。望月日陰と申します。私に何かご用でしょうか?」
「初めましてか⋯⋯俺の名前は白川緋色だ。君に頼みがある」
 俺は彼女が俺と会ったことを覚えていないことに、少なからずショックを受けていた。

(そこそこ有名で、人の記憶に残るようなルックスを持っていると思っていたのは自惚れだな)