契約婚だから溺愛は不要です〜余命一年で捨てられた私はホテル王に求婚される〜

(ひなたが起きたらどうするのよ! 早く私の上からどいて、正しい川の字の定位置に戻って)

 何だか良いムードになってきている気がする。

 緋色さんのような良い男は、すぐ良いムードに持っていけるスキルがあるのだろう。
 私はそのムードを打ち破るべく、元彼の話をすることにした。

「勇のことを私は甘く見ていた気がします。彼、結構良い男だったみたいですね」
 私は勇と10年以上付き合ってきたが、彼を地味で安全な男としか見ていなかった。

 彼の深い愛情にも、何かあった時の行動力にも全く気がついていなかった。
(確かに、私は父と同じくらい鈍くて抜けているかも⋯⋯)