契約婚だから溺愛は不要です〜余命一年で捨てられた私はホテル王に求婚される〜

「この水、鈴蘭の香りがするわ。これも毒入りでしょう。小笠原家の人間って平気で人を殺すのね」

 鈴蘭を浸した水を飲むと呼吸停止や心不全を起こす危険性があると聞いたことがある。
(今、殺されるかもしれないという気持ちで注意深く見ているけど、今まで小笠原家で私は毒を盛られ続けてきたかもしれない)

「ボタニカルウォーターよ。貧乏人の日陰は水道水しか飲んだことなさそうだけれど、私は小笠原陽子よ。生まれた時から特別な人間なんだから。私から見ればあんたも、あんたの母親も人間じゃないの」
 陽子は水の入ったグラスを思いっきり壁に叩きつけた。

 破片が飛んで頬を切った気がして、血の匂いが鼻を掠める。