契約婚だから溺愛は不要です〜余命一年で捨てられた私はホテル王に求婚される〜

強引に連れてかれた店には、私と綾野先輩しかいなかった。

「他のお客さんは?」
「ああ、ここ夜はバーとして開いているけれど、今、特別に営業時間外に開けてもらったんだ」

 終始微笑みながら語る綾野先輩は、どの面下げて私に会っているのだろう。

「私、綾野先輩と話すことなんてないので帰ります。子供が家で待っているんで⋯⋯」
「日陰の子じゃないだろ。全く、白川社長って酷い人だよな。家政婦とベビーシッターが欲しかったんだろ。奥さん亡くなって3年も経ってないのに、節操がなさすぎ。日陰が勿体無いよ」
「節操がないのは先輩でしょ。私から陽子にあっさり乗り換えたじゃない」