契約婚だから溺愛は不要です〜余命一年で捨てられた私はホテル王に求婚される〜

「私、須藤玲香さんには何の感情もないんです。彼女を昔見かけたことがありますが、如何にも愛人っぽい秘書でしたね」

 艶のある長い黒髪に、透き通るような白い肌をした妙に色気のある美女だった記憶がある。
 母親という言葉とは程遠いボンドガールみたいな女性だ。

 私の存在を確認しても、私のことを彼女が愛しそうに見てくれたことは一度もない。

 何だか心がざわついてくる。

(あの人が母親だったと言われても、実感が湧かないわ)


「日陰の中での母親は望月加奈なんだな」

 私を愛そうに撫でてくる緋色さんの手の温かさに、私は気持ちが落ち着いてくるのが分かった。