契約婚だから溺愛は不要です〜余命一年で捨てられた私はホテル王に求婚される〜

「すみません。辛いことを思い出させてしまって。それに緋色さんのことを節操がないなんて思ってませんよ。ただ、私、緋色さんのことを全く覚えていなくて⋯⋯」

 自分は割と人から覚えられるようなルックスをしていると自負していたからショックだ。
 でも、あの時彼女がしてくれた親切は彼女にとっては記憶に留めるほどのことではなく当たり前の事だったということだろう。

「日陰は客のことはあまり覚えないタイプなのか?」
「いいえ、クレームのあったお客様はレポートにあげたりするので覚えています。それと、不思議なお客様は覚えておきます」

「日陰にクレームを言ったりする客がいるのか? 完璧な接客に見えたが」