チョコレートに想いを込めた日、親友は消えた

 奏がポケットからスマホを取り出す。そのまま操作して、俺に画面を見せる。奏と和哉のツーショットが表示されている。

「去年の球技大会?」

「そ。俺、昔バスケ部でいじめられててさ。和哉が止めてくれたんだ」

 それで恩人か。

 あ。

『チョコ百個は多すぎだよなー』

 ふと、和哉の言葉を思い出す。球技大会の後に行われたバレンタインで、和哉はチョコをかなりもらっていた。

「あの時、和哉十五本くらいゴール決めたっけ」

 一試合につきそれくらい。そのおかげで俺のクラスが優勝した。

「そうそう、バスケ部殺しだよな、あれ」

 つい頷いてしまう。あまりにかっこよかった。その姿を見た瞬間、恋をしてしまった。

 ……殺し?

「まさか、バスケで負けたのが悔しくて」

 慌てて首を振る。さすがにない。そんなことで事件が起きてたまるか。

「違う。あいつらじゃない、きっと」

 奏がじっと俺を見つめて言う。そう確信しているみたいな顔。部活仲間だもんな、信じたいよな。

「……そうだよな」

「あぁ。でも球技大会がきっかけで、和哉を目の敵にした奴はいる」

 負けず嫌いのやつはそうなるか。

「バスケ部の奴か教師か。あるいは全く別のやつか」

 呟いて、俺は腕を組む。

「教師はどうだろうな。和哉成績よかったし」

 奏は首をかしげる。

「すごく良くない考えだけど……たとえば生徒を盗撮したことを和哉が知ってしまったとか」

 口封じのために、殺された。

「その線はありえるけど……泉は疑いたくねぇ」

 奏は下を向く。

「体育の? バスケ部の顧問だっけ?」

「あぁ。いい奴なんだよ。いじめがなくなったばっかの時、俺孤立してて。気にかけてくれた」

 優しいのか。

「でも人って、何をするかわからないから」

「……俺が和哉を殺したかもな」

 奏の真横にある壁を叩く。

「冗談でも言うな。教室戻る」

 立ち上がって、俺は歩き出す。

 ふざけんなよ。そういうのは聞きたくない。

「待って、ごめん。……人を信頼しすぎるなって伝えたくて」

 慌てて奏は追ってくる。九十度くらい深く頭を下げてくれる。そこまでしなくていいのに。

「奏こそ。もう戻ろう、二限始まる」

「あぁ。留喜、放課後空いてる? ロッカー調べる」

 証拠探しか。

「わかった。掃除終わったら教室戻る」

 凶器が見つかるといい。もう処分されているかもだけど。

「よろしく」

 奏が空き教室のドアを閉める。頷いて、俺は教室に向かう。