君に捧げるアイラブユー




バサッ、とビニール傘を開く音がした。透明な傘の端が、下駄箱の向こうに少し見える。

私は息を潜めたまま、その隙間からそっと二人を見る。東の横に立つ女の子。距離が近い。傘に入るため、自然に肩を寄せている。

東は特に何も気にした様子もなく、普通に歩き出した。


二人の背中が雨の中へ消えていく。私はその場から動けなかった。

なんかもう、情けない。隠れて盗み聞きして、勝手に傷ついてる自分が。


東は悪くないのに。優しいだけなのに。分かってる。そんなこと、ちゃんと分かってる。

でも、やっぱり嫌だった。

東の隣にいるのが自分じゃないこと。東が他の子に優しくしてること。そんなの当たり前なのに、見せつけられると苦しい。

私だけ特別、なんてありもしないのに。ほんの少し話しかけてくれただけで、笑ってくれただけで、期待してしまう自分がいる。勘違いしてしまう自分がいる。

東はきっと、何も考えてないのに。


グッ、と拳を握る。

爪が手のひらに食い込むくらい強く。

雨音は相変わらずうるさくて、空は真っ暗だった。湿った空気が息苦しい。

灰色の空を睨むみたいに見上げる。


早く、晴れてよ。空も。この気持ちも。全部。早く。