話の流れを聞くだけで状況は簡単に理解できた。女の子は傘を持っていない。東は傘を持っている。そして今、二人で帰ろうとしている。
つまり、それって。
相合傘。
瞬間、胸の奥がぎゅうっと掴まれたみたいに痛くなった。苦しい。なんで。今日やっと東の声が聞けたのに。本当なら嬉しいはずなのに。どうしてこんなタイミングなの。
今日一日、会えなかっただけでもしんどかったのに、最後にこれ見せる?ひどくない?
「駅まででも大丈夫?そのあと、傘持ってっていいから」
「えーっ、優しいなぁ、東は」
東の声はいつも通りだった。特別熱を持ってるわけでもなくて、誰にでも向けるあの優しい声音。だから余計に苦しくなる。
東は誰にでも優しい。それくらい知ってる。
困ってる人を放っておけないし、頼まれたら断れないし、自然に優しくできちゃう人。だからみんな東を好きになる。
たぶん本人は全然気づいてない。自分の優しさがどれだけ人を勘違いさせるか。どれだけ期待させるか。どれだけ、心を揺らすか。



