「東、何かあるなら言って?気になるよ」
気になるなんてもんじゃない。本当は怖い。東の機嫌一つでこんなに心が揺れる自分が情けない。でも好きだから仕方ない。東は私の言葉を聞いて、何か言おうとして、やめて、また口を開いて閉じた。
そんなふうに迷う東を見るの、珍しい。私は息を呑んで次の言葉を待つ。やがて東は観念したみたいに小さく声を出した。
「……天馬と何喋ってたの」
…………え?一瞬、本当に意味が分からなかった。頭の中で言葉を反芻して、数秒遅れて理解する。
そこ?そこなの?
「え……えー……っと」
思わず視線が泳ぐ。いやだって無理でしょ。『東の写真見て盛り上がってました』なんて言えるわけない。しかも『東の好きなタイプ知ってる?』とか聞いてたんだよ?絶対言えない。
私は誤魔化すみたいに唇をきゅっと結ぶ。すると東が少し顔をしかめた。
「俺に言えないこと?」
「そう、じゃないけど、」
東はどうしてこんなに気にしてるんだろう。私と北見が話すなんて、今さらだ。去年からずっとだし、東だって見てきたはず。なのに今さら。東には関係ないはずなのに。なのに、どうしてそんな顔するの。
「西宮」
名前を呼ばれる。低くて、少し掠れた声。私は反射的に返事をした。



