「うん。松葉杖してる間、たくさん助けてくれてありがとね」
「はは、俺は何もしてないよ。治ってよかった」
――――だめだ。好き。
ふわっと笑う東の顔を見た瞬間、胸がぎゅうっと痛くなる。
東はいつもこうだ。優しくしたことを特別だと思ってない。自然に人を助ける。自然に気遣う。そして全部、大したことないよ、みたいに笑う。
怪我したときだってそうだった。保健室まで運んでくれた。階段で困ってたらすぐ隣に来てくれた。荷物持ってくれた。歩幅合わせてくれた。私が困る前に気づいてくれた。あのときの私は、東がいるだけで安心できた。
東の大丈夫?って声だけで痛みが和らぐ気がした。何もしてない、なんて嘘だ。東は知らないだろうけど、東の存在そのものが、私にとってはいちばんの薬だった。
「天馬は体調大丈夫?」
東が北見にそう声をかける。北見は東に向かって小さく頷いたあと、なぜか呆れたような目を私へ向けてきた。
……な、なに?私なんかした?
「俺先行くから、どうぞふたりで」
「……え?」
私は目を瞬かせる。けれど北見は本当にそれだけ言うと、さっさと階段のほうへ歩いていってしまった。
……なにその気の利かせ方。急にどうしたの。
いやでも、今はそれどころじゃない。私は隣に立つ東を意識して、そっと呼吸を整えた。



