「東。わざわざ返しに来てくれたの?ずっと持っててもよかったのに」
「ずっと、持ってて……?なんで?」
少しだけ首をかしげる東。
ああ、その何も考えてなさそうな顔。そういうとこだよ。
「そしたら、私が会いに行ったよ。でも、来てくれたの嬉しい」
ほんの少し口角を上げて、視線を合わせて、いつも通りのあからさまなアピール。
でも、言わなきゃ伝わらないし、言っても伝わらないのが東だ。
「はは。俺のとこ来てくれんの?じゃあ、持って帰ろうかな」
「……うっ……!」
完全にカウンターパンチ。
横から突き刺さる三木の“あんた何してんの”という冷めきった視線は、とりあえず今は見ないふり。
東との会話は、できるだけ、できるだけ引き伸ばしたい。たった数分でもいい、チャイムが鳴るその瞬間までここにいてほしい!!
だってクラスが違うから、廊下ですれ違うか、こうやって何かの用事がない限り、1日のうちにちゃんと話せる時間なんてほとんどない。
そう思えば思うほど焦るのに、いざとなると話題が出てこない自分が情けない。
昨日のテレビ?天気?いや違う、もっと自然で、もっと盛り上がるやつ……!
ちゃんと用意しとけばよかった……!



