「一人のときは呼んで」
また当たり前みたいに言う。私はそれを受け取りながら、小さく息を吐いた。
「私、いつも東に振り回されてる…」
「そう?俺のほうがいつも西宮に振り回されてるけどね」
「……っ」
………嘘つき。そんなはずない。振り回してるのは絶対そっちだから!
急に距離を詰めてきたり、優しくしたり、手なんか普通に繋いできたりして、そのくせ何事もなかったみたいな顔をしてる。ずるい。
私は視線を逸らしながら、ポケットからスマホを取り出して、お母さんに連絡する。
でも頭の中は東のことでいっぱいだった。
もっと、振り回されてもいいのに。
もっと、私のこと好きにさせていいのに。
「(私は……東に、もっと堕とされたいのに)」
その願いは口には出せないまま、胸の奥に沈む。
東はそんな私の内側なんて知らないまま、静かに隣にいてくれる。
ただ、さっきまで繋がれていた左手の温度だけが、まだ残っている気がしていた。



