大丈夫だよ。東がいたら私は大丈夫だよ。
それは本当。
東がこうして隣にいてくれるだけで、不安なんて全部消えていく気がする。
怖かった階段も、東が手を繋いでくれてるだけで全然平気だった。
………でも、大丈夫じゃないのも本当だよ、東。
繋がれた左手。東の体温。優しい声。全部が、私を苦しくする。
足首よりも心臓のほうが何倍も痛い。好きすぎて苦しい。優しくされるたび、期待してしまう自分が苦しい。
無言のまま階段を降り続ける。
東は急かさず、ずっと私に合わせてくれていた。その沈黙さえ嫌じゃなかった。むしろ心地よくて、ずっとこのままでいたいって思ってしまうくらいだった。
でも、階段は永遠じゃない。最後の一段が近づいてくる。あと、一段。
それを降りたら終わる。手も離れる。東はまた、いつもみたいに遠くなる。
そう思った瞬間、急に怖くなった。
嫌だ。終わってほしくない。
私は最後の段差の前で、ぴたりと止まった。
「西宮どうした?」
東が少し不思議そうに私を見る。その声に、胸がどくんと鳴る。
今しかない。今を逃したら、また東は離れていく。
もう2週間みたいな時間を過ごすのは嫌だった。怖かった。だから私は、逃げたくなくて。逃がしたくなくて。



