突然のことに頭が追いつかない。だって、え?なんで?ついさっきまで避けられてる……って落ち込んでた相手が、今こうして当たり前みたいに隣にいる。しかも自然に松葉杖まで持ってくれている。
どういうこと?意味が分からない。
混乱している私に構わず、東は静かな声で言った。
「ほら、手貸して」
そう言って、東は松葉杖を左手で持ちながら、右手を私の前に差し出してきた。
綺麗な手だった。指が長くて、男の子っぽい骨ばった手。思わず見つめてしまう。
いや、待って。手?手って、あの、繋ぐってことですか?どういうこと?なんで東が?それに、私のこと避けてるんじゃなかったの……?
混乱して固まっていると、東は少し眉を下げて、「危ないから」と小さく言った。その声が優しすぎて、余計に心臓が苦しくなる。
次の瞬間、東は動かない私の左手を軽く掴んだ。
「っ、」
びくっと肩が揺れる。東の手、大きい。熱い。包み込まれるみたいに指を握られて、一瞬で頭が真っ白になった。
「ほら、行くよ」
まるで幼稚園児を連れていくみたいな口調だった。
東はそのまま私の手を引きながら、一段下へ降りる。私も慌てて片足でぴょんっと飛び降りた。
背の高い東と、ここでやっと同じ目線になる。東が少しだけ振り返る。その表情は、驚くくらい優しかった。
「降りないの?」って言いたげな目。ああもう、本当にずるい。繋がれた左手が異様に熱い。東の体温がそのまま流れ込んでくるみたいで、頭がおかしくなりそうだった。



