でも今は、その時間が全部なくなった。
東は来ない。全然来ない。
本当に、びっくりするくらい来ない。
ここまで露骨に避けられると逆に笑えてくるレベルで来ない。
「……私は、なんてことをしたんだ……」
「まぁまぁ、過去は変えられないからね」
隣で三木が呑気に雑誌をめくりながら言う。慰めてるのか適当なのか分からない。
でもその通りだった。過去は変えられない。
あのとき、お姫様抱っこだけで満足しとくんだった……!
そうだ。なぜ私は、あの神イベントだけで終われなかったのか。好きな人にお姫様抱っこされるなんて、一生に一回あるかないかの奇跡だ。それだけで十分だったじゃん。十分すぎたじゃん。
なのに。
なのに私は――欲望に負けた。
東の顔が近すぎて、かっこよすぎて、優しすぎて、意味分かんなくなって。気づいたら、あんなことをしてしまった。
「裏ではこんなんなのに、東の前で猫かぶりすぎなんじゃないの〜?」
三木が頬杖をつきながら、机に突っ伏している私を見下ろしてくる。その顔は完全に面白がっていた。
ひどい。こっちは本気で悩んでるのに。



