南野さんはふっと表情を消して、さっきまでの楽しそうな顔が嘘みたいに消えて、真っ直ぐ私を見る。その目を見た瞬間、私は思わず背筋を伸ばした。
「汀の彼女になったんなら、一生離さないで。絶対、誰にもその場所譲らないで」
その言葉は驚くほど重くて、胸の奥にまっすぐ落ちてくる。
彼女になれた。東と両想いになれた。好きな人と付き合えた。最近はその事実が嬉しくて、幸せで、浮かれていた。
だけど――そうだ。
付き合えたから終わりじゃない。東の隣にいられることは当たり前じゃない。これから先もずっと隣にいたいなら、努力しなきゃいけない。
東に好きでいてもらえるように。東を幸せにできるように。私もちゃんと頑張らなきゃいけないんだ。
「……うん」
小さく頷くと、南野さんは少しだけ目を細めた気がした。
「汀の彼女になれて浮かれてる西宮さんに、いいこと教えてあげる」
「……いいこと?」
嫌な予感しかしない。ものすごく嫌な予感しかしない。案の定、南野さんはニヤリと片方の口角を上げた。
その顔を見た瞬間に確信した。
絶対いいことじゃない。絶対ろくでもない話だ。



