テスト期間だってそうだった。勉強が苦手な私に、東は何度も何度も同じところを説明してくれた。一回で理解できなくても、嫌な顔ひとつしない。
私が「ごめん、もう一回」と言うたびに、「いいよ」と笑って教えてくれる。そのおかげで、今まで見たこともないような高得点を取ることができた。
それだけじゃない。私が東に会いたいなと思ったとき、抱きつきたいなと思ったとき、なぜか東はいつも先回りする。
「すぐり」
そう呼ばれて振り返った瞬間、優しく抱きしめられる。まるで私の心を読んでいるみたいに。
もしかしてテレパシーでも使えるの?
そんなことを考えていると、自然と頬が熱くなってしまう。
好きだなあ。本当に好き。
でも――。
恋人になった日以来、まだキスはしていない。あの日のキス。思い出すだけで顔が熱くなる。
唇が触れた瞬間の感覚も、東の表情も、全部覚えている。
だけど、だからこそ思うのだ。あれ、本当に初めてだったのかなって。
もちろん私は経験なんてない。比較できる相手なんていない。それでもなんとなく分かる。
私なんて緊張で頭が真っ白だったのに。どうして?なんでそんなに慣れてるの?もしかして、経験があるから?
いやいや、でも東だよ?あの東だよ?恋愛に興味なんてありませんって顔をしてた東だよ?
でもでも、もし元カノとかいたら?私の知らない過去があったら?
そう考え始めると気になって仕方なくなってきた。



