君に捧げるアイラブユー




「すぐり、どうした?」



まただ。また簡単に私の名前を呼ぶ。

その瞬間、さっきまでのもやもやが全部吹き飛びそうになる。

ずるい。本当にずるい。東は私の弱点を知っているんじゃないかと思うくらい、簡単に心を掻き乱してくる。



「…また明日ね、東」

「東じゃなくて、汀」

「…っ、な、汀!」

「ん。また明日ね」



たくさん話して、勉強して、手を繋いで、抱きしめてもらったのに。それでも足りない。

もっと一緒にいたい。もっと名前を呼んでほしい。もっと近くにいたい。好きになればなるほど欲張りになる自分がいる。


東が見えなくなるまでその背中を見送る。

夕暮れの光の中を歩いていく後ろ姿。大好きな人の背中。でもその背中を見ながら、胸の奥に小さな棘みたいなものが残っていた。



……でも、もしかしたら。この気持ちも、このドキドキも、この幸せも。全部私だけが初めてで、東はそうじゃないのかもしれない。


手を繋ぐことも。名前で呼び合うことも。抱きしめることも。こんなふうに誰かを送ることも。私と出会う前に、誰かとしていたのかもしれない。


考えたって分からない。聞く勇気もない。それなのに、一度浮かんでしまった考えはなかなか消えてくれなかった。


東ならモテただろうし、告白だってたくさんされてきたはずだ。私なんかが知らない東を、誰かが知っていたとしてもおかしくない。

そう思った瞬間、胸がちくりと痛んだ。


自分でも嫌になる。せっかく幸せな一日だったのに。東は何も悪くないのに。

でも好きだから気になってしまう。好きだから独り占めしたくなってしまう。好きだから知らない過去にまで嫉妬してしまう。



なんて面倒くさいんだろう、私。