朝のホームルームが終わるとすぐ、大野の周りには人が集まっていた。
「大野くん!琥珀くんって呼んでもいい?」
「大野くんってどんな子がタイプ?」
「彼女とかいるの?」
女子たちに囲まれてめんどくさそうな大野を、遠目で見る。
「紗英も大野くんのところ行こうよ!」
琴音が半ば強引にあたしの腕を引っ張る。
「私はいいよ。琴音行ってきたら?」
あたしは別に大野なんかに興味はない。
何なら『ウザイやつ』と認識している。
「えー、まあそうする」
そう言って琴音は大野の席に走って行った。
冗談のつもりだったんだけどな。
まさかのあたしよりも大野。
大野に負けた気がして、何だか悔しかった。
大野の周りには大勢の女子。
これじゃああたしは席に座れない。
仕方なく、教室の隅に移動しようとした時だった。
「そういえばさ、高木ってウザくない?」
大野の近くにいるひとりの女子が言った。
「えーそれな!?琥珀くんの隣だからって調子に乗りやがって」
びっくりしてその場に立ち尽くす。
あたしは今まで自分の悪口を聞いたことがなかったし、もちろん悪口を言う側でもなかった。
それなのに今日、初めて自分の悪口を聞いてしまった。
「ねぇ、琥珀くんは高木のことどう思うー?」
「高木なんかより、私の方がいいよねー?」
そう言って大野にベタベタくっつく女子たちを見て、あたしは気分が悪くなった。
大野は興味がなさそうにスマホをいじっている。
溢れそうな涙を必死に堪えていた時、ひとりの女の子が叫んだ。
「あのさー。人の悪口言ってると嫌われちゃうよ?」
そう言ったのは、琴音だった。
琴音は元々目立つタイプではない。
だけど、あたしを想って勇気を出して言ってくれたのだ。
「はー?何あんた」
「地味のくせにウザいんですけどー」
そう言われて一瞬俯いた琴音だったが、すぐに顔を上げて言い返した。
女子たちと琴音の言い合いがエスカレートしてきた頃、大野が席を立った。
「琥珀くん?」
女子が大野に上目遣いをする。
「俺の近くで喧嘩するな。喧嘩するならあっち行け」
そう言って大野は出て行った。
「あっ、琥珀くん!」
琴音以外の女子が、大野の後を追う。
残された琴音はあたしの方を見て悲しそうに微笑んだ後、席に着いた。

