あの夏、キミが描いた青空

教室に入っても、あの男子はいなかった。


「やっぱり違うクラスだ」


あたしは心の中で喜んだ。


「なーんだ、まだ時間あるじゃん」


不貞腐れたように、ほっぺたを膨らませた琴音があたしの席に来た。


「あーごめん、時間間違えたみたい」


あたしは適当に謝った。


「もう…。あの王子様、どっか行っちゃったし」


そう言って廊下の方を見る琴音。


あたしはひとつ、気になることがあった。


それは、あの男子は隣のクラスに行ったはずなのに、黄色い歓声が聞こえてこないということだ。


外であれだけ騒がれていたのだから、教室内で騒がれてもおかしくないだろう。


それなのに、一切声が聞こえない。


あたしは琴音の話を右耳から左耳に流しながら、そんなことを考えていた。


しばらくあたしがボーッと琴音の話を聞いていると、先生が入ってきた。


「おはよー」


その声で先生が来たことに気づいた琴音は、「また後でね」と言って自分の席に戻っていった。


「はい、急だが今日は転校生を紹介する。入ってきてー」


転校生?そんなの聞いてないよ。


あの男子かな…いや、まさかね。


ガラガラと教室のドアが開けられ、一気に鼓動が早まる。


一歩ずつ教室に入ってくる転校生。


「あっ…」


その顔が見えたとき、あたしは絶望した。


転校生は、あの時の男子だったからだ。


「きゃー!」


「イケメン!」


クラスの女子たちは大騒ぎ。


もちろん琴音も叫んでいた。


絶対にあたしとは違うクラスの人だと思ったのに。


関わりたくないやつと同じクラスになってしまったという、絶望感を味わった。


「初めまして、大野琥珀です。よろしく」


大野くんが話すだけで悲鳴をあげる女子たち。


確かに顔はかっこいいけど、冷たそうな話し方だ。


あたしには一々叫ぶ女子たちの気持ちはわからなかった。