あの夏、キミが描いた青空

あたしと琴音は走って先回りし、階段に隠れて待機することにした。


少しずつ、黄色い歓声が近づいてくる。


「あっ、来たよ!」


琴音に肩を叩かれて、あたしも顔を出した。


角を曲がって、ゆっくりと姿が見え始めた。


「かっこいい…」


そう思ったのも束の間。


あたしは彼に見覚えがあった。


そう、あのとき絶対に関わらないって決めた人。


途端にあたしは、こんなところに隠れているのがおかしく思えてきた。


『これだったらもう教室に行こう』そう思って立ち上がったあたしの腕を、慌てて琴音が引いた。


「ちょっ、ちょっ、ちょ。急にどうしたのよ。王子様に見つかっちゃうでしょ?」


琴音はもう『王子様』と呼んでいる。


一昨日のことは、なんとなく琴音に知られたくなかった。


だからあたしは、


「ほら、早く教室行かないとチャイム鳴っちゃうよ?」


今の時間は知らないが、適当にそう言った。


すると琴音はなんの疑いもなく、「それはヤバいね!」と言って教室にダッシュしていった。


あの男子も琴音の後ろに続いていたけど、うちのクラスに転校生の話はないし、きっと隣のクラスだよね。


そう自分に言い聞かせて、あたしも教室へ向かった。