全ての授業が終わり、帰りの準備をする放課後。
早めに準備を終わらせた琴音が、カバンを持ってあたしの席に来た。
「ねぇ、さっきの何?」
いきなりあたしの席に来て、しかも怒っているようだ。
琴音はあたしの机に、自分のカバンをバサっと置いた。
「さっきのって?」
もしかして、あの授業の時のことだろうか。
「王子様と関わらないでって言ったよね!?」
そう言って今度はあたしの机に、バンッと思いっきり手をつく琴音。
「別に関わってないよ」
琴音の怒りが沸騰する中、あたしはできるだけ冷静に返した。
やっぱりさっきのテレパシーは通じなかったみたいだ。
「じゃあ何?何で王子様の寝顔見てたのよ!」
琴音の声がますます大きくなる。
「いやそれは…」
寝息が聞こえたからちょっと見ただけなのに。
もしかして、見過ぎだったかな?
「ほら、何も言えないんじゃん。本当にお願いだからやめてよね!」
早口で琴音はそういい、教室を出て行った。
「はぁ…」
琴音を怒らせるつもりはなかったんだけどな。
何より、一番大切な親友である琴音と心が離れてしまいそうで怖かった。
「はぁ…」
あたしは再びため息を吐いた。
そういえば、大野はどこに行ったのだろうか。
いつもこの時間になると姿を消す大野。
女子から隠れているのだろうか?
いや、あたしが気にする必要はない。
どっちにしろ、もうあたしが大野と関わることはないのだから。
全ては大切な親友、琴音のためだから。
荷物をまとめ終わったあたしは、いつもみたいに帰る生徒たちを見送っていた。
ふとあたしは、大野のカバンがないことに気がついた。
大野にしては珍しく早く帰ったのだろうか。
これで大野とふたりきりになることもないし、安心だ。
刻一刻と最終下校時間が近づいてくる。
それにしても、今日はまだ人が多い。
「たまにはこんな日もあるよね」
雨だし、生徒玄関が混むのも仕方がない。
それに、今日の六限は体育だったクラスが四クラスもあった。
体育館は広いけど、四クラスも同時に行うのは流石に無理があっただろう。
もしかしたらこの人たちは、六限に体育をして教室に戻ってきた頃には下校時間になって、バタバタと準備をしていたのかもしれない。
うちのクラスも六限に体育があるときは、出るのが遅くなる。
「四クラスだもんね」
だからまだ、こんなに人数が多いのだと察した。

