廊下から、バタバタと足音が聞こえる。
あたしの声を聞いて探しているのだ。
「ったく、お前が大声出したせいで」
隣の大野は呆れている。
「いやいや、元々はあんたのせいでしょ。あんたが私を脅かすから」
あたしも負けじと言い返す。
「はいはい、めんどくさい女は黙っとけよ」
そう言って大野は立ち上がった。
「え、どこ行くの?」
「帰る」
コイツは何を言ってんだか。
まだ廊下には先生がいるってのに。
「本気?」
流石に冗談だろう。
そう思って聞いたが、
「本気」
どうやら大野は本気みたいだ。
「ふーん。先生に見つかっても知らないから」
あたしは大野を引き離すように、素っ気なく言った。
ドアに近づいていく大野の背中を見つめるだけで、止めることはしなかった。
そして、大野がガラガラとドアを開けた。
「大野くん!?この時間に何してるのよ」
ほーら、言わんこっちゃない。
「ちょっと来なさい」
結局大野はふたりの先生に連れて行かれた。
そしてあたしは、その隙に机の中からテキストを取って、走って学校を出た。
大野も職員玄関から入ってきたのだろう。
職員玄関に『大野琥珀』と書かれた靴が置いてあった。
「大野って色んなものに名前書くんだなー」
何だかちょっぴり大野が可愛く思えてきて、頬が緩んだ。
大野は今頃怒られてるのかなー?
まあでも自業自得だよね。
再び傘を広げて歩くあたし。
テキストが濡れないように、何か入れ物を持ってくるべきだった。
色々考えた結果制服の中に入れて、その上から腕で押さえた。
何とか帰ってきたあたしは、部屋に行っきテキストを広げてシャーペンを握った。
この問題は今日の授業で習ったばかりだから、全くと言っていいほどわからない。
あたしは、元々勉強ができる方ではないため尚更だ。
めんどくさいけど、ひとつひとつスマホで調べながら問題を解いていった。

