「…俺は……生まれる直前まで女だと思われてたんだ。誰もが2人目は女が生まれるって…望んでたんだよ」
「なんだそれ。そんな話聞いたことねえよ。母さんはそんなこと一言たりとも言ってなかった。…葉奈と名付けたのは、自分と同じ漢字を絶対に入れたかったから。そこに選ばれたのがおまえで……俺はずっと羨ましかった」
「……はっ、ははっ、くははっ」
俺はまた騙されていたってわけか。
あのメイドに、狂った女に、俺の幼少期を真っ黒に染めてきたあいつに。
もう恨む気なんかない。
ないけど、今の俺で、あの女の前に堂々と立ってみたかった。
「兄弟のなかで母さんが唯一名前を付けたのは葉奈なんだ。母さんが大好きだった…“花”。男と分かっていながらも名前にしたくらいだ、それほど特別だったんだろうな」
まるで魔法の言葉とでも言うように、識は俺に伝えてきた。
「俺も思う。おまえがいちばん……あの人の優しさを引き継いでるって。おまえは誰よりも母さんに願いを込められていたんだよ、葉奈」
「……はっ、…ははっ、……っ」



