日向家の諸事情ですが。





「日向の人間になる前、母さんは何をしてたと思う?」


「…さあ。聞いたことないな。大学卒業してそのまま結婚したんじゃないの?」



あんな男と結婚した母を馬鹿な女だと、俺は正直思ってしまっていた。


もしあの男を選ばなければ、彼女は身体が弱いながらも長生きできていたかもしれない。

ストレスで悪化することは無かったかもしれない。


でも、彼女があの男と結ばれなければ。


結果的に俺たちは……俺は、日暮 サナとは出会えなかった。



「いや。母さんはずっと、生け花の講師をしていたらしい」


「…生け花……」


「葉奈。おまえの名前をつけたのは…間違いなく母さんだよ」


「………、」



男の俺は必要なかった。

御曹司の年子など居ないも同然。
跡取り息子は識ひとりで足りている。


俺は、女になる以外に価値はない人間。


───そう、何年も何年も言われ続けてたんだよ。