日向家の諸事情ですが。

葉奈side




「……最悪」



こんなことってあるのかよ。

お盆でもないし月命日ってわけじゃない。


ふと思い出したから向かった次第の墓参りに、同じタイミングで同じことをしようとした奴がいるとは。


よりによってこいつと被るなんて最悪だ。



「今日…天気いいもんな」


「昨日もよかったけど」


「…………」



ほんと、おまえって何もかもが下手すぎなんだよ。

俺だったらもっとうまくやってみせるし、あんな馬鹿げた決断はしない。


まあ花すら持ってこない俺と比べて、ちゃんと手にしているそいつは名前の通り常識はあるってことだろうけど。



「俺、水汲んでくるから」


「…ああ」



母親が亡くなって6年。
長いようなあっという間な月日だった。

俺の時間は逆に進んだけれど、大切なものはいつだって過去にある。


もし母が生きていたら俺と識にどんな言葉をかけてくれただろうって、たまに考えてしまうときがあった。