日向家の諸事情ですが。





思わず額に、たらりと汗が流れた。


識くんの意向。


そう言われてしまえば私はもう、断る理由がない。

そして罪滅ぼしとして葉奈くんとの縁談を受け入れることも、簡単にできてしまう。



「…そう。わかったわ」


「椿お嬢様…!」


「磯山。これが私にできる…謝罪よ」



葉奈くん、ごめんなさい。

あのときひどいことを言ってしまって、本当にごめんなさい。


日暮さんは「気にしてない」と言ってくれたけれど、言葉の傷は物理よりも深くに残ってしまうのよ。


気にしていなくても、それは一生として残ってしまうの。



「あのっ、すみません…!椿さんは居ますか…!!」


「勝手な侵入は困ります!お帰りくださいませ…!!」


「と、友達ですっ!椿さんのお友達の日暮です!!友達に会いに来たんです…!!」



屋敷内が騒がしい。

メイドたちの声がてんやわんやと聞こえてくる。


私は思わず立ち上がって、ドレスの裾をそっと上げるように向かった。