日向家の諸事情ですが。

椿side




幼い頃の記憶。

日向家にたまに遊びに来ていた私は、1度だけ、女の子の格好をした男の子に声をかけられたことがあった。



『つ、ツバキちゃん…』


『…あ!あなたはシキくんの……』



顔を赤らめながらも精いっぱい。

ずっと自分に声をかける機会を持っていたかのような、そんな表情で。


けれど、私は。



『キャハッ!おとこおんな!変なの!』



識くんのことしか見えていなかった私は、彼にひどいことを言ってしまった。

識くんの大切な弟に、最低なことをしてしまったの。


その様子をたまたま通りかかって見ていた識くんは、そのあと。



『俺の弟を馬鹿にするな。おまえなんか…大嫌いだ』



あのときの言葉はずっと、私の後悔と罪悪感になって胸に突き刺さったままだ。

19歳になった今も抜けるどころか、もっともっと深く食い込んでいる。