「アニキ……はい、これ、」
日向家の男どもは「やってもらうこと」を好まない。
それは男の子特有の見栄のようなものか、虚勢を張っているのかは分からないけれど。
今もわたしは空気を読んで、座り込む長男に道具だけを差し出す。
「…やってくれるか」
「……え、わたしが?」
「…たのむ。自分じゃ無理だ」
「ま、マジか…、わかった!滲みるかもだけど我慢してね…?」
やっべえ……手が震える。
プルプル震えながらも唇の横をそっと手当てすると、なぜかふっと微かな笑い声が聞こえてきたりして。
葉奈…、あなたは今、どんな顔をしてる?
「このあと俺と飯いくぞ」
「ええっ、えっ、みんなで?」
「ちがう。おまえとふたりでだよ」
「…えっ」
初めてのお誘い。
こんな空気感で求めるものじゃないけれど、素直に嬉しくもある。
でも……みんなで行ったほうが絶対に楽しいのになって、思う。
そんななか、わたしは葉奈に顔を向けてしまった。
もし彼に「行くな」と言われたら、わたしは行かないつもりで。



