葉奈はもう、自分のチカラで自分の立場をコツコツと積み上げているんだ。
日向家に頼らず、最悪日向家を捨ててまでも生きられる道を。
一般の私立高校に通って、名前を偽ってまで、そうやって自分の居場所を寂しく手に入れてきた。
「おまえが使い捨てた女を俺が面倒見て、おまえが必要ないと切り捨てた事業も俺に渡して?結果次男としての尻ぬぐいだって?…調子乗るのもいい加減にしてくれよ」
「…俺は最初からそのつもりだった」
「最初?…いつだよ」
「……おまえが俺を……本気で殺そうとした日だ」
「………、」
知らないことが多すぎる。
今ある葉奈の殺気でさえ、アニキを本気で殺そうとしていた。
もっと前にも今日のような日があったってこと…?
葉奈。
あなたはそれほどまで兄を憎んで、それでも自分の居場所をたったひとりで作ってきたんだね。
わたしは、なぜか、そんな葉奈が愛しくてたまらなくなった。
「あの日から俺は、いつかこうするってずっと決めてた」
「余計なお世話なんだよ。俺は大東家を背負う責任も、日向家を背負う責任だってない。俺は無責任なままこれからも生きていく次男だからさ」
「……葉奈は、昔から椿のことが好きだろ。俺は…好きじゃない。好きじゃないと女と結婚なんか……したくない」
え……?
無意識に音を出してしまったわたしの声は、この上なく小さく、そして震えていた。



