「なに?意味わかんないんだけど。…おい識、どーいうことだよ」
「俺は大東家との婚約を破談にした」
「…………」
「日向家の跡取りも断った。つまりこんなクズ長男の尻ぬぐいは……結果的に次男であるおまえの役目になるんだよ」
アニキ、なに考えてるの…?
そんなの葉奈はもう望んでないよ。
大東家との婚約を破談…?
だったら椿さんはどうなるの?
たとえ政略結婚だとしても、幼い頃からアニキを想いつづけた1人の女の子の気持ちは。
「っ、ハナちゃん…!」
「は、葉奈…!!」
ダメ───と、わたしと楓くんが飛び出すよりも先に。
長男のもとへ向かった葉奈は、誰よりも先に握ったこぶしを彼へと突き出す。
「死ねよ」
ドガッッッ!!!
鈍い音が100畳のリビングに響いて、長男の身体は次男によって吹き飛ばされた。
抵抗もせず素直に食らったアニキはきっと、こうして殴られることは覚悟していたんだろう。
「やっぱおまえはあのときに殺しとくべきだったな」
「…ああ、俺もそう思う」
「つまんないことばっか言ってんなよ。今さら俺にぜんぶ譲るって?……馬鹿にしてんの?」
そうだよ、アニキ。
それだけはしちゃダメだったの。
アニキはね、長男として手にしたものを磨いていけばいいだけ。



