日向家の諸事情ですが。





「…ねえ。サナちゃん」



ぎゅっと、加えられるチカラ。

髪を梳(と)くように撫でられて、わたしの身体は逆に硬直してしまう。



「うまくいけば留学しながら大手企業に入れそうなんだよ。そのために俺は今も、その会社の社長に愛想振りまいてた。これも一種の戦術だろ?」


「そ、その会社って、もしかして……」


「…そう。早瀬さんが居るとこ」



真冬にーちゃん。

もしこれがわたしにとっての幸福なのだとしたら、たぶんちょっとちがう……。


いろいろびっくりすぎて頭が追いつかないよ。


何よりいちばん驚いたのは、いつまで経っても腕が離されないこと。



「俺はもう長男になりたいだなんて微塵も思ってない。その代わり、次男だからこその立場を手に入れてみせる」


「ひゃ…っ!」



はあっと、耳元。

吐息をわざと響かせるように、跳ねるわたしの肩で遊んでいると思えば。