「胸っ、いたい…っ」
「大してないだろ」
「ほら…っ、すぐそーいうこと言う……っ」
ひどいよーー……と。
なんかもうわたしって、こーいう泣き方しかできないんだろうな。
素直に泣くことはできないし、それだけはしちゃいけないし、勝手に舞い上がって勝手に失恋して。
だってさっき、アニキが息抜きでわたしの隣に来てくれたのめちゃくちゃ嬉しかったんだもん。
そのあとすぐ、あれだ。
神様はわたしに意地悪すぎる。
「あっち行ってっ、また冷やかしに来たんでしょ…っ、どーせいつもみたいに馬鹿に───……」
なに…してるの……?
もしかしてお酒飲んじゃった?
包みこまれた深緑色のタキシードのなか。
苦しくもなく、かといって安心もしすぎず、なんとも奴らしい抱きしめ方だった。
「っ、うぅぅ……、ぁぁぁーー…っ」
わんわんと、それはもう子供みたいに。
だって優しいんだもん。
おかしいよ、優しさからいちばん遠そうだった男がこんなにも優しいなんて。



