日向家の諸事情ですが。





「もう…っ、なんだこれ…っ」



ゴシッ、ごしっ。

拭っても拭っても溢れてくるから、アイメイクが取れちゃうことなんか気にしてられない。


こんな顔じゃ戻れないよ……。


ぶるっと身震いをしたところで、背後から近づいていた足音が止まった。



「もしかして飛び降りんの?そしたら俺、結果的にディ◯プリオになるしかないんだけど」



いつも通りの冷やかしに、今は振り返ることはできそうになかった。



「どこ…行ってたの。わたしいっぱい探したんだよ…?」


「…ちょっと大事な人と話し込んでた」



大事なひと…?
あなたにもいるの?

まあ、そりゃいるよね。


長男にいるなら次男にもいるはずだし、そもそも長男より女慣れしてそうな人間は次男だ。



「…こっち向けよ」


「っ、いーからあっち行って…!飛び降りないよっ、そんな怖いこと…できないから」



来ないで今は。

自分では隠せている気でいるし、もし気づいていたとしても黙って気づかないフリをするのがジェントルマンってやつだ。