「し、識くん…」
「用が済んだなら俺のところに来いと言ったはずだろ」
「…ごめんなさい」
酔っ払いたちを相手にもしないで、アニキは椿さんの細い手を掴んでその場を去る。
わたしはその一連をハッキリと記憶に入れて、楓くんと望に一言添えてからホールを後にした。
アニキたちとは反対方向の出口だ。
なんでもいいから遠くに離れたかった。
「……っ」
あんなふうに守られてみたかった。
あんなふうに言われてみたかった。
恋を知ったばかりの17歳のわたしには、あまりに苦しすぎる。
「真冬にーちゃんのうそつき……」
幸運なんて、幸福なんて、落ちてこないよ。
四葉のクローバーの効力はなるべく即効性でお願いって頼んでおけば良かったのかな…。
無我夢中に外のラウンジへと向かえば、夜の海風が肌を冷やしてくる。
このラウンジは船長室と同じ景色が見られると誰かは言っていて、けれど今はわたししか居なかった。



