日向家の諸事情ですが。





「てかシキ兄、あれ放っといていーの?」



楓くんが気づいて指をさした先。

酔っぱらった数人の男たちに囲まれているお姫様がいた。



「お嬢さんお嬢さん、大東のお嬢さん。そのアクセサリーとっても似合ってるねえ」


「ちょっとよく見せてくれるかあ〜?」


「っ、休憩室はあちらにございますわ」


「おいおい、俺たちは別にそこまで酔ってないんだぜ。そんな怖がるこたぁねえってのに」



よく言うよ……。
酔ってる人間ほどそう言うんだよね。

ここはもう無理にでも助けるしかないっ!!


───と、出ていこうとしたわたしを。



「おまえが行っても二の舞だ」


「えっ、」



そっと引き止めて、わたしより前に出たのはアニキだった。

それだけ伝えてまっすぐ向かっていく。



「俺の婚約者に何か用か」



そこまで堂々と「俺の婚約者」だなんて、彼の口から聞いたのは初めてだった。

椿さんを背中に隠して守ろうとする姿なんかはもう、王子様というより未来の夫だ。


ただの旦那様だ。


………いちばん見たくなかったな。