日向家の諸事情ですが。





「私ね、日暮さん」



わずかにトーンが落ちた声に、鏡越しに視線を移した。

わたしの背後に立った彼女は切なそうに微笑んでいて、なぜかドキリとする。



「…識くんと葉奈くんに、嫌われているの」


「え…?」


「彼らは私のことを……恨んでいるわ」



それはいつから。
いつの記憶をあなたは思い出しているの。

幼い頃から親睦はあったというから、確実にわたしが知るずっとずっと前のことなのだろう。



「私は過去に、幼い頃…、葉奈くんにひどいことを言ってしまったから」


「…もしかしてですけど……女の子の格好をしていた男の子に、ですか?」


「っ!」



図星、らしい。


わたしもそれはもう知っているよ。
知っているから、話して。

そんな気持ちを込めて黙り続けていると、落ち着いた声で紡がれてゆく。



「当時の私は…子供だった。葉奈くんが抱えたものなんて知らないで、茶化すように笑ってしまったわ。それをね、識くんに怒られてしまったの」