初日から熱出して迷惑かけるわ、何したっていつも空振り三振、結局は誰かに助けられちゃってる。
奉仕先に盗聴器や盗撮器を仕掛けて乗っ取ろうとしたひどい女だ。
それに日暮家の実娘でもなければ、騙して嘘をついて日向家に潜入した存在のようなもの。
ただ私利私欲のために使われただけの憐れで惨めな駒であり、それさえご主人様たちに助けられるってただの厄介者でしかない。
「ふふっ。でもね、毎日笑ってるんだよその子は」
「…今日の夕飯、」
「…え?」
「……シチュー食いたい」
それが、彼なりの「ごめん」に聞こえた。
最初の頃のことを謝っているというなら、なんとも葉奈らしくなくて逆に笑ってしまう。
「うんっ。こうなったらホワイトソースから挑戦してみるよ」
「…いーよ市販で。あいつらのなかで庶民的な味にいちばん慣れてんのは俺だし」
それもそうだねと軽く肩を揺らして、開きっぱだったスーツケースを静かに閉じる。
かつて女の子として生きていた少年─葉奈─と一緒に。



