「とあるポンコツの昔話、聞いてくれる?」
「…………」
「その子は10人姉妹の末っ子でした。小さな頃からお姉ちゃんたちができることが、なぜかずっとできない子でした。
お姉ちゃんたちには贈られる言葉が……なぜか唯一として贈られない子でした」
「…………」
「それでも毎日毎日、決められた勉強をしました。お姉ちゃんたちが座学をやっている横でどういうわけかその子だけけがね、
廊下のお掃除やトイレのお掃除をさせられちゃったりして。冷たい手を擦って、赤い鼻をして……何年も何年も。指導者である母の口癖は…、口癖はね、」
ほんの少しだけ身体を預けてきた感覚があったから、背中にゆっくり手を回した。
重さに耐えながらも穏やかにわたしは続ける。
「あなたには座学より実践が大切よ、…でした」
それから16歳。
一人前ではないけれど、姉たちのようにひとりで奉仕先へと勤務しなくちゃいけない年齢になったその子は。



