日向家の諸事情ですが。





「よしっっ」



自室から持ってきたスーツケースは、わたしがこの場所に来たときに着替えやらを入れてきたものだ。


もうわたしが日暮家に戻ることはない。
としたら、このスーツケースを使うこともない。


パカっと開けて、そこに女の子の衣服を詰めていく。

最後に写真もそっと置いて、あとは蓋を閉じるだけ……というところで。



「なにそれ」


「っ!!?うわ…ぁっっ!!」



なんにも気配を感じなかった……。

うそっ、いつから居た……!?

ちょっと待ってそいつにだけは見られちゃダメなやつ…!!


咄嗟にわたしが取った行動といえば、開いたスーツケースの上にうつ伏せ大の字。


身をもって隠す。
いわゆるバカそのものだ。



「えっ、もう帰ってきたの…!?早くない…!?」


「今日は午前授業だけって言わなかったっけ」


「言われてねええよぉぉぉうっ」



うつ伏せ大の字でジタバタジタバタ。

見下ろすように聞こえる声が、言われなくとも「おい馬鹿」と言っていた。