「サナちゃん」
「ああそうだ」みたいな空気感で沈黙を破ったのは葉奈で、本人はアニキの言葉などこれっぽっちも相手にしていない様子。
「俺が卒業したらおまえ、俺といっしょにイタリア行きだから」
「……はい???ナニ…、イタリアて……」
「詳しいことはまた今度話す」
ほらね、こんな突拍子もないこと言ってリビングを出ていく変わらなさは次男にしかない自由。
卒業ってのは、奴の高校卒業を指しているんだろうとはなんとなく。
ただ、イタリア……?
初めての単語すぎて追いつかないよバカ。
それは楓くんも、望も、そしてアニキまでも。
「なに今の…、旅行の話……?」
って空気感じゃなかったことだけは、わかる。
旅行にわたしだけを誘うって意味わかんないし、逆に命の危険を感じちゃうよそんなの。
とうとうわたしを抹殺する気なのかあいつは、って。
「そーいえばハナちゃん、ちょっと前からサオトメさんに媚びってるっぽかったし……イタリアってそーいうことじゃない…?シキ兄なんも知らないの?」
「…………」
とりあえずわたしはずっと静かだった末の子の口に高級バニラヨーグルトを突っ込んでおいた。



